記憶堂書店



あずみは屋敷に帰ると両親に酷く叱られた。そして、部屋から一歩も出ないよう、閉じ込められてしまったのだ。

「龍臣君、俺見てられないよ。こんなあずみさん……」

ずっと今まで様子を見ていた修也が辛そうに顔をそむけた。部屋であずみは食事もとらず、泣いてばかりで憔悴していた。
龍臣もそんなあずみの姿は見たくなかった。しかし、どうしても目をそむけることが出来なかったのだ。

そして、閉じ込められてから三日がたった満月の日。
あずみの父親が部屋にやってきたのだ。

「あずみ、三彦はここを辞めたよ」
「え……」

突然の話にあずみは呆然として言葉をなくしている。

「使用人風情にたぶらかされおって。三彦には退職金をたくさん渡して、二度とこの町に近寄らないよう約束してもらった。あいつは幼い弟がいたからね、金を受け取ったよ。所詮、お前より金を選んだんだ。もうとっくにこの町にはいない。戻ってきたら、容赦しないと伝えてある。だからいくら待ってもあの男はここには来ないよ。お前は約束通り大沼様と結婚するんだ」
「嫌ぁ!!」

あずみは部屋を飛び出していく。部屋の窓から庭で取り押さえられているあずみの姿が見えた。髪を振り乱し、泣き叫んでいる。
父親はそれを静かに窓から見つめていた。

「あなた、これで良かったの?」

母親が入ってきてそう尋ねる。母親は娘の姿に涙を流していた。

「使用人との恋が許されるわけない。身分違いにもほどがある。これでいいんだ」

父親は冷酷にもそう告げて部屋を出て行った。

「そんな……、脅しじゃないか」

修也が苦しそうに呟いた。
龍臣達が生きる現代では考え付かない話だが、あずみの生きていた頃は違う。それほどまでにあずみは裕福で、身分さがあったということだった。
三彦はあずみをとても好きでいた。しかし、彼には幼い弟や家族がいたんだ。きっと彼が養っていた。
あずみと逃げることは簡単だ。彼だってそうしたかっただろう。しかし、それをしたら? 幼い弟や家族はどうなる? どんな目に合う?
それがわからない程、三彦は馬鹿ではなかったということだろう。