「…こんにちは。……この前は…どうも。」
「元気ないね。どうかした?」
「いえ。……なんでもないです。」

涙が一筋こぼれた。びっくりした。
なんで泣いてるの?泣きたいなんて思ってないのに……!

「ご、ごめんなさい。じゃあ。」

そう言うとあいかは歩き出した。
男の子はこちらをずっとみつめていた。

帰り。2人と話すことが出来なくなったあいかはぼっちだ。帰る相手もいない。彼氏もいないのだから。

帰り道の途中。ベンチにあの男の子がいた。うっ…今は関わりたくない! 下をむいて歩いていった。

「ねぇ。」
うるさい。今はひとりにしてよ。
「ねえってば。ねぇ!」

うるさい。

「……なに?なんですか?なんなのよ!人が落ち込んでるのわかるでしょ!?人の弱みにつけこんでモテよう作戦?いまはひとりにしてよ!だれともしゃべりたくないの!」

はぁ、はぁ、はぁ。
ほんとになんなのよ。

「…話したくないなら何も話さなくていい。僕の話を聞いて」

あいかは少し向きなおって顔をあげた。

「でも君がなんで落ち込んでるのかをききたい。それだけは聞かせて?」
「………わかった。」

あいかはそれまでの出来事を話した。

「なるほど。君はどうしてそうなったかわかる?」
「わかるわけないじゃない…そんなこと…… 」
「そうか。」

男の子は急に声を上げた。

「なら僕が教えてやろう!それはお前が弱いからだ!」
「え……」
「いいか。よく聞け。お前は弱い。たぶんクラスで1番弱い。学校という場所は絶対に誰がが標的になる場所だ。そこをどう乗り切れるか。学校生活というのはそれにかかっている。」

あいかは少しポカンとしながらそれを真剣に聞いていた。

「1回標的にされたらおわりだ。しかもおまえが喧嘩したのは権力の強いオトモダチだ。これから新学年になるまでずっと続くだろうな。」
「新学年?」
「いや、無理だな。恐らく新学年になってもはぶられたままだ。1回ハブられるとあいつはやばいと勝手に言われておまえはぼっちだ。」
「そ、そんなにひどく言わなくても!新学年になったら自分から変われるようにします!」

男の子は笑った。

「変われるようにする?変われなかったらどうする。いやお前が変わっても他の人の心は変わらない。結局今の状況からは抜け出すことはできないんだ。」

「……少しの我慢くらいはできる……」

ぼそっとつぶやいた。

「少し?少しじゃ終わるわけ無いだろう。」
「え……」

「このまま我慢し続けるのか?もっと痛い目にあっても我慢し続けるのか?なんで怒らない。なんで叫ばない。なんで戦おうとしない。風向きを変えたくないのか?風向きを変えたいなら戦うしかない。戦って」

男の子は耳を貸せという動作をした。







「全部ぶち壊せ」







「……全部…ぶち壊す……」

「僕の名前は翔。宮﨑翔だ。風向きを変えたいなら僕と一緒に戦うしかない。変えたいのか諦めるのか自分で考えろ。」

妙に心に響く言葉を言い残して彼は帰っていった。