「おっはよー。」


茶髪にピアス。
普通は、絶対近寄りたくないよね?
こんな人。
まあ、私なんだけど・・・。

「ねえねえ、優姫ちゃんは、誕生日いつ?好きな色は?じゃあ、きらいな色は?」
などなどと、たくさんのことを話してるこいつ。
周りの子は、私と、目すら合わせないっていうのに、どうして。

「ねえってば!優姫ちゃん!」
もぉ、しつこいなあ。

「あのさぁ?うるさいんだけどさっきから。ってかあんただれ?」
私は、こいつに嫌われたい一心で、わざと強く言った。
そうしないと・・・
そう考えている間も、ずっと黙っている目の前の奴。
さすがに言い過ぎたかな?なんて考えていると、
「は、はじめて、話してくれた。見た目だけじゃなくて、声もかわいいんだね?おれは、渡辺駿だよ!よろしく。」
目を輝かせながら、手を差し出すこいつ。じゃなくて、駿。


はじめて、真正面から見る駿の顔は、びっくりするくらいに整ってた。
今まで見た中で、だんとつだ!

ま、でも、私には、ヒナがいるから。

「なあ、優姫ちゃん。ヒナの彼女なんでしょ?」
“ヒナ”という単語に反応する体。

「ヒナのこと知ってるの?」
「知ってるも何も、おれ、ヒナのいとこなんだ!」
え?駿がいとこ?ヒナの?


ヒナっていうのは、渡辺ひなせ。
そういえば、名字も一緒だ。

「やっぱりそうなんだ!ヒナ、あんましゃべんねえからさ。そういうこと。」
確かにそうだ。
ヒナから自分の事なんて聞いたことない。


「駿ー。早く来いよー。」
そう、少し遠くのほうから聞こえた。

「おう、今いくよ。」
そういって、こっちに振り向き、
「ごめんね?またね!」
というだけ言って、声のしたほうに走っていった。


ヒナと知り合ったのは、中学生の時のことだ。
私は、今のような恰好をしていることで、よく、先生に呼び出されたりした。
その帰り、毎日、体育館の前を通る。
その中には、いつも、ヒナ一人の姿が。
ヒナは、黙々と、シュート練習を一人でしていた。

私は、声をかけようか迷ったが、その日は、その場を後にした。