「思わないよ。だって大好きな奈留を傷つけるようなことはしたくないからね」




パパは少し頬を赤らめながらそう言った。



そうだよね。普通はそうだよ。


大好きな人がいたらどんなに他の女の子が言いよって来たとしても関わろうとしないよね。




「でもね、男っていう生き物は不器用だから、自分の気持ちとは反対のことを言っちゃう時もあるかもね」


「反対のこと?」


「ほら、よく小学生の男子は好きな女子に意地悪しちゃうって言うだろ?素直に好きと言えなくて、でも構って欲しいから意地悪しちゃう。男ってそういう生き物なんだよ」




好きな人にこそ意地悪しちゃうのが男って生き物なの?


じゃあ、ひーくんがあたしに意地悪してくるのは好きの裏返しってこと?



いやいや。それはないな。

だって小学生の男子がよくすることでしょ。

ひーくんはもう高校生だもん。



自分にとって好都合に考えてもしそれが違って傷つくのはもうまっぴらだ。



小学生の頃そうだったとしても、今好きになってもらえないなら意味がない。