あたしが突然立ち上がると、ひーくんは驚くことなくただ静かに近づくあたしを見ていた。
隣に座ったときに密かに感じるひーくんの体温。
触れそうで触れないこの距離は今のあたしにはもどかしくて仕方ない。
ひーくんに正面を見せる形で正座し直し、床に頭がつくかつかないかくらいまで下げた。
「あたしこそ、ごめんなさい。ひーくんの話聞かないで、おまけに英二くんと誤解させるようなことして……本当にごめんね」
「いや、あれは俺の八つ当たりだから桃は悪くない。英二にも悪いことした。どうもお前のことになると調子が狂う」
どうやら今のひーくんは子犬系男子らしい。
自分の髪をクシャクシャっと無造作に触り、こっちを見なくても困った顔をしてるのがわかる。
これがまさに〝母性がくすぐられる〟ということなのだろう。



