泣き出す桃。



抱きしめることもせず、早くこの場を離れたくて保健室を後にした。



勝手についてくる絢を無視し、自分の教室へ戻る。



まだ後夜祭が行われているらしく、教室には誰もいない。




「英二って友達の彼女までとるんだねぇー、ほんと最低」



1番後ろの自分の席に座る俺。

その前に座る絢は振り返りながらしゃべる。



「そういえば、今日から泊まってもいいんだっけ?」


「あぁ。もう行く」


「えっ?もう⁈」



めんどくせぇけどしょうがない。

親父も実の娘じゃねぇのにお人好しだから「犯人捕まるまでうちに泊まれ!」なんて、ほざきやがって……。



俺は今でも99%は嘘だと思ってる。



こいつのことだ。

寂しくてこんなあざとい嫌がらせばっかりしてくるんだろう。



なんだかんだで何年も会ってるからか……または俺も似ているからなのか、そんなこいつの寂しさをわかってしまう。