〜陽 side〜



前のめりになる俺の身体を抱きしめる桃。

久しぶりに抱きあったけど、今は気持ちのいいもんじゃない。




「結局おまえは英二を庇うのかよ」


「だって殴っても意味ないでしょ?そんなことしても分かり合えないよ……」


「分かり合う?そんなつもりねぇよ」



しっかりと俺の腰を抱きしめていた桃の腕を掴み突き放す。



「助けてくれるヒーローとそれを庇う優しい桃ちゃん、お似合いじゃん」



もう誰からもなにも聞きたくない。



ついさっき保健室に入ってきた時すぐに目に入った光景が頭から離れない。



うつむく桃の頭を優しく撫でる英二。



心が小さいだけなのかもしれない。

けど、英二が桃に好意を寄せてることを知った以上、下心としか思えない自分がいるからどうしようもない。



桃だけは裏切らないと、英二だけは信じれると心から思っていた。



それなのにこの有様。

しまいには、桃に嫌がらせをしようとしてた女がいたなんてこと数ミリも知らなかった。



あー……なんでこうなっちまった?

付き合うってことがこんなにめんどくさいなんて知らなかった。