嘘でしょ?英二くんがあたしを?



これっぽっちも本当の話だと思ってなかったから、どんな顔をすればいいのかわからない。

今すぐにでもこの場から離れたい。



でも現実はそうはいかず、こんな空気の中逃げれる勇気もない。



あたしはただひーくんが好きで仲直りがしたいだけなのに……。



英二くんの胸ぐらを掴んだままのひーくんは意味深に笑い、次の瞬間…………素早く出されたひーくんの右拳は英二くんの頬を力強く殴った。



勢いよく床に倒れこむ英二くん。

殴られた衝撃で唇を切ったのか、下唇からは血が出ていた。



その血を指でぬぐい、ゆっくりと立ち上がる。



一瞬の出来事で驚きの声も出なかった。



「陽に殴られるようなことしてないと思うけど」



あたしからは英二くんの背中しか見えないからどんな表情をしてるのかわからないけど、それでも冷静でいるんだってことはわかった。