明らかに腑に落ちてないだろうひーくんは渋々「わかった」と低い声で言った。


条件としてお父さんの電話番号を絢さんに教えるから自分で頼め、と付け加えて。




「ありがとう、後で連絡してみるね!……それと、もうひとつお願いがあるんだけど……」


「なんだよ」



さっきまで泣いていた絢さんにやっと笑顔が戻り、あたしも内心ホッとした。



ひーくんが絢さんのことを信じれなくて頼られるのを嫌がっていたのは、きっと強がりだったんじゃないかなと思う。



2人は同じように家庭環境が複雑で、人を信じることが簡単にはできないのかもしれない。



「今日このあと家まで送ってほしいんだけど……」


「英二に送ってもらえ」


「え、でも、英二くんなにか用事あるんじゃなかったっけ……」


「ないない!全然送ってくよ」


「ほんと?じゃあ、英二くんお願いします」



このあとの文化祭はお邪魔したら悪いから、と絢さんは英二くんと2人で周ると言ってその場からいなくなった。