「桃、こいつに狙われてたの覚えてる?そういうやつだよこいつは」


「覚えてるよ。でもそれはそれ、これはこれでしょ?もしこれで泊まらせてあげなくて絢さんがなにかの事件に巻き込まれちゃったらどうするの?後からじゃ遅いんだよ?」


「ストーカーだって嘘に決まってんだろ。俺らの気を引きたくて口から出たでまかせだろ」



こんなに真剣に相談してきてる絢さんの言葉を嘘の一言で終わらせようとするひーくんに、さすがのあたしも堪忍袋の尾が切れた。



そしてそれは英二くんも一緒だった。




「あのなぁ、さすがにここまでの嘘はつかねぇだろ!そんなのもわかんねぇのかよ。確かに今まで気を引くために嘘ついてたこともあったよ?現に今回は俺も加担しちゃって悪いと思ってるよ。でもよ、家族って存在を感じたいからこそだろ?」


「逆に聞くけど、英二こそこいつが今までどれだけ嘘ついて気引いて、俺らの周りの女たちをどれだけ脅してきたか知ってんだろうが。まさか忘れてるわけじゃねぇよな?」


「でも、それも全部結局はおまえがもっと家族として関わってあげてねぇからだろ」


「家族?数年一緒に住んで離婚して離れてから何年も連絡取らずいきなり現れたやつが?ふざけんじゃねぇよ」


「籍は違っても血繋がって一瞬でも一緒に暮らしてたんだから家族だろ⁈絢ちゃんは家族だと思ってるんだよ。なんでその気持ちに寄り添ってあげられねぇんだよ。だから絢ちゃんもつきたくない嘘ついておまえの気引こうとしてんだろうが」



ヒートアップする2人の間で絢さんはただただ下を向いて泣いていた。