勘が鋭い葉月はあたしの前の席に瞬時に座り、前のめりでスタンバイした。



始業式中にひーくんへの不満を葉月へぶつけた結果だ。




「受験生だからしょうがないよ?でもさぁ、少しは会ってくれてもよくない?別にどこか出かけたかったわけじゃないのに」


「まぁねー、夏休みの後半ほぼ会ってないんでしょ?本宮先輩も鬼畜だよねー」


「完全に鬼でしょ!もう放置プレイだよ!」




夏休みの間、あたしたちが会えたのはたったの4回。


なんなら、前半3回の、後半1回。



家が近いからもうちょっと会えるかなーって思ってたのに………。




「誰が鬼畜だって?」


「ひゃっ……!」




突然、耳の後ろに息を吹きかけられ、思わず変な声が出てしまった。



そんなイタズラをする人は、あたしの知ってる限りたった1人しかいない。



クラスの女の子たちがザワザワしだし、所々から「かっこいいー!」と嫌でも聞こえてくる。



その声を浴びてる本人の方へ振り返ると、満更でもなさそうな顔をしていたからちょっとムカついた。