勝手に聞いて勝手に傷ついて、バカみたい。



せっかくひーくんの部屋に来てさっきまでいいムードだったのに、まだ心の準備ができてないからってムードを自分で壊して……。




「確かに入れたことはあるけど、」





1人で考え込んでいるあたしにひーくんはそう言って、再びあたしを抱きしめる腕に力を込めた。




「“好きな子”で入れるのは、桃が初めてだよ」


「………」


「あれ?無反応?好きになったのも桃が初めてなんだけど……それだけじゃだめ?」


「ずるい」


「………」


「ずるいずるいずるい!そんなの、それだけじゃないよ!嬉しいよ!にやけてるもん。あたしだってひーくんが初めてだよ。こんなにヤキモチ妬くのだってめんどくさくなるのだって、ひーくんのことが……大好きだからだもん」




本当にこの人はずるいと思う。



あたしの気持ちがどんなに落ちてても、簡単に上げてみせる。



それも、ただ上げるだけじゃなくて、幸せな気持ちにまでしてくれる。



言うまでもなく顔が真っ赤になったあたしに、ひーくんはニヤリと妖しい表情を浮かべて………キスの嵐を浴びせたのだった。