翌朝、昨夜の出来事を話さず、いつもと同じ様に自宅を出た。
でも、向かう先は学校ではない。

香奈恵が住むマンションに向かいながら、グッと拳を握りしめる。
怖くないと言ったらウソになる。何が起きるか分からない。いや、何が起きても不思議ではないのだから。それに・・・

「あのさ」
「なに?」
学校に行く訳でもないのに、ゾンビメイクを1時間もかけてした香奈恵が振り向く。香奈恵いわく、気分の問題らしい。
「実は、気になっている事があるんだよね」
「なに?お腹の肉とか?」
「違うわ!!」

ゾンビを苦悶させ、私は引っかかっている事を口にする。
「人間」
「は?」
「実はさあ、気にはなっていたんだけど、ずっと霊だと思ってたんだよね」
「なにが?」
「ここ最近、誰かに見られてる気がしてたのよ。でも、私ってさ、霊にストーカーまでされる人だし、その感じる視線も霊だと思ってたんだよね。でも・・・」
「違う?」
「たぶん、人間」

その時、背後に近付く気配を感じ、二人同時に振り返った。