私の言葉を確認すると、女性の霊は何の前触れもなくフッと消えた。

圧迫感がなくなり、室温が一気に元に戻る。
室内に外から風が吹き込み、表通りをバイクが通り過ぎた。

へたり込み動けない私の耳元で、脱力した香奈恵が問う。
「さっきの、マジ?」
「うん。このままだと何の解決にもならないし、あの女の人”タスケテ”って言ってたし」

香奈恵にスパーンと頭を叩かれる。
「オヌシは愚か者じゃのう」
後頭部を撫でながら、香奈恵の方に向き直る。
「ってか、毎日夜中に来られて、コレを繰り返されたら病むわ」
「確かに・・・」

窓を閉め、カーテンを引く。
「さて、朝まで寝よう」
「そうだねえ・・・でも、ホンモノがあんな怖いとは思わなかったよ。マジで呪われそうだった。ハハハ・・・」

二人で同じ布団に入り、狭いベッドの上で向き合う。
「明日、学校休んで行くから」
「じゃあ、私もサボるわけだね」

当然の様に付き合うという香奈恵のホッペに軽くパンチし、表情を隠して上を向く。
こんなに怖い思いをしたのに・・・
ホント、泣けてくるよ。