ずっと呼吸を止めていたかの様に、大きく息を吐き出す。

間違いなく引き離した。
この電車に私が乗った事には気付いていない。

ズルズルとシートに寄り掛かる。
でも・・・
ポケットのスマートフォンがブルブルと震えた。


ヤバス!!先生が大魔神に変身してたよ~
ま、テキトーに言い訳しといたけど・・・
で、大丈夫?
あとで行くから、しっかり自宅警備しといてね。


いま電磁力。


電磁力?


電車。
どうにかしないとマジでヤバイ!!
あとで作戦会議ね。


どんな変換ミス?

青木ヶ丘駅で下車し料金の精算を済ませると、私は一目散に自宅を目指した。とりあえず家の中に入りさえすれば、何とかなるハズだ。ただこれでは、根本的な解決にはならない。このままでは永遠に、あの霊と鬼ごっこを続けなければならない。

マンションに辿り着き、階段を使って5階に上がる。とてもエレベーターを使う気にはなれない。

ドアの前に立ちポケットから鍵を取り出して挿し込む。そして、自宅の玄関に飛び込み通路を振り返る。

何もいない。
今はまだ、何もいない。