「いっやあ、良かったねえ。勉強教えてくれる人が見付かって。これで、ママに本物のゾンビにされなくて済むわ」
「あんたは、マジでヤバいから」
来た道を徒歩で帰る。駅から10分ほどだった事を考えれば、自宅までも大して時間はかからないだろう。

道路に映る影が長くなり始めている。
スマートフォンを取り出して画面を確認すると、18時を過ぎていた。

その時、不意に背後からクラクションが鳴り、私達は慌てて端に寄って振り向いた。そこには、業務用と思われる白いワンボックスカー。車体には赤い文字で、濱を丸で囲んだマーク・・・
「やあ」
爽やかな声が響き、助手席から生徒会長が顔を出した。

「時々、配達を手伝ったりしているんだ。ホントにたまにだけどね。配達も終わったし、家まで連れて帰ってあげるよ」
「ラッキー!!」
ゾンビが喜ぶ姿を見て、運転席に座る中年男性がギョッとする。続いて私の手元を見て、再度ゾンビを見る。考えている事がだいたい分かる。
「スイマセン、よろしくお願いします」
私も伏し目がちに後へ続く。

生徒会長の家は、市内に10店舗以上のスーパーマーケットを経営する実業家だ。″マルハマ″を知らない市民は、まずいないだろう。


都合良く登場した生徒会長に、香奈恵の自宅近くまで送ってもらった。
「気を付けて帰りなよ」
私達2人は、白いワンボックスカーに手を振った。