校門まで行くと、ジャージ姿の体育教師が生徒達を見送っていた。要するに生徒達にプレッシャーをかけて、早く下校させようとしているのだ。
「しっつれいしまーす」
「失礼します」
「おう、ゾンビとゾンビマスターも早く帰れよ!!」

まだ明るい時間帯に下校させられているのには、ある理由がある。人口30万人余りの東桜山市に、全国ニュースのトップを飾る事件が起きているからだ。


始まりは、今から7ヶ月前──
市内を流れる八重川の土手で、早朝ランニングしていた男性により、若い女性の死体が発見された。鋭利な刃物により顔を切り刻むといった犯行は残虐で、とても正気の沙汰とは思えなかった。

警察は懸命に捜査をしたが、犯人の手掛かりすら全く掴めないまま1ヶ月が過ぎ、第2の犯行が起きる。

その後、現在に至るまで死体として発見されたのは4人。この事件に巻き込まれた可能性が高く、行方不明になっている人が3人。その行方不明者の1人が、クラスメートの小雪なのだ。

犯人は未だ捕まっておらず、手掛かりも殆ど無い状況が続いている。それで、「明るいうちに帰宅しろ」という事なのだ。