従兄弟の山崎龍斗は


俳優 山崎龍斗だということがわかった今

私は緊張と不安と気持ち悪さに押しつぶされそうです。


「二人とも仲良くねぇー」



そう笑うと、ひいおばあちゃんはそそくさ私たちの前から姿を消した。



「....よろしくねいねこちゃん」



あの後、にこりと笑った彼は
私を連れてここまできた。




「どうせ迷子になると思ったから強引に引っ張ってきちゃった」



そう言うと、汗がべったりの私の腕から彼は手をどかした。



「いや、えっと。」



状況がうまく読み取れません。



「いいから、仲良くしないと、おばあちゃんに気を使わせちゃうでしょ。」


掴まれていた腕が痛いんだっていうのに
何爽やか笑顔を振りまいてるわけ。


ほっぺたを大きく膨らませ彼を睨んでいた鋭い私の目はそのまま、ひいおばあちゃんの方へ向けられる。


少し心配したようにこちらを見るひいおばあちゃんに私は申し訳なく苦笑いを返した。



「.....気持ち悪」



「は?」



「苦笑い、ブスになってますよ、従兄弟ちゃん」


俺のお手本を見ろとばかりにキラキラスマイルを嫌という程押し付けてくる彼に、むしずがたつ。



「最低ですね。あなた、本当にはいーーーフガッ!?」



俳優の山崎龍斗ですか?



と、そう尋ねようとした時
彼は乱暴に私の口を塞いだ。


「これ以上言うな。従兄弟の龍斗って言ったよね?」



にこりと笑う彼に


なんなんだこいつ。



と、思うばかりで

全くキャラがわからない。


「ふがっんん!!!」


きもいんだてめぇ


と言おうとしてもやはりまだ、くちはふさがれたまま。



「いいね?もう二度と言わないでよ。ここでは従兄弟だからね?
俺だって乱暴にしたくないんだよ?」




「ぷはっ!
........この仮面男」



「うふふ。面白い」



どうやら、龍斗くんは俳優だということをここでは忘れたいらしい。


どういうことか。私にはさっぱりわからない。


「仮面男さんは、なんか変です」



「えーそうかなー。」



「最初イケメン、次は優しい、その次はは.....私とは違う世界で活躍していると憧れましたが、やっぱりどこか気持ち悪いです」



「ヅカヅカいうねー」



私には理解しがたい。

なんで、俳優と知っているのに
口に出してはいけないわけ?



「それより、仮面男さんは従兄弟がいること知ってましたか?」


というか、家族も親戚も、もちろんお母さんも

山崎龍斗のことをしっているのに

どうして私に言ってくれなかったの?



「.....うん。知ってたよ」




私だけなんかすごく

遅れてる。




ただでさえ、
私の従兄弟が



私の好き好きで大好きで
憧れだった山崎龍斗とは



貧血になりそう。