あれから、一週間
私は彼とはあまりあっていない。




朝、学校へ行くときに
会うくらいで。
それでも避けたように


....おはようございます



と、挨拶するだけ。




やっぱり、この状況を忘れたら、
彼に会った時に、いつも怯んでしまう。


やっぱり龍斗くんは龍斗くんだから、

彼の美貌に
いつもドキドキしてしまう。

初めて会ったように
息がしずらくなるほど苦しくなる。



そんな自分が嫌だから。



あまり会いたくないんだ。













今日は、長期休暇で、
創立記念日 祝日 土日と続いての
四連休。




今日は、我が胸を張れる喜多野高校の創立記念日。




今の時刻は午後12時。

こんな時間まで寝れたなんて本当久しぶり。


ゆっくりと立ち上がってコタツに直行。


手元には
TSUTAYOで借りた漫画で
隣にはたくさん山積みされている。

足元はコタツ。

お母さんが家では使わないからとくれたもの。



ポカポカとした太陽が私を温める。



昨日の夜に宿題を終わらせた私は、あと三日、自由の身なのだ!




あぁーなんて最高なんだろう。



このままずっとここで、ゆっくりとしたいな。


そんな風に、漫画の胸キュンシーンに、にやける顔の自分を気持ち悪いと思っていた。

でも、やっぱりこの時が一番楽しい。







......そんなことを思ったのもつかぬ間


まだ、手元の漫画の半分さえも読み進めていない頃。




ピーーンポーーーーーーン



古いせいだか、少しおかしげな音のベルが静かな部屋に響いた。




ドクンドクン



なぜか、嫌な予感がした。



宅配が来る予定もなく、友達も私の家まで知らない。
両親も日頃からなにかを送ってこないし



とにかく今日、私の家に来る人は
ほぼ、限られている人のみ。






........嘘だよね。



一瞬、いろんなことを想像したけど、おそらく違うと願いたい。




重い足をコタツから引っこ抜いて、廊下を静かに歩く。




鼓動が高鳴った。




ガチャ





「......よぉ」



頰と鼻を真っ赤にした彼は大きな荷物を手にして私の目の前に現れた。




......なんで、また。




龍斗くんがいるの。




「......帰ってください。」



私は、顔を下げて、小さく呟いた。



....あ、手の怪我すっかり治ってる。


目線が彼の腕へ持って行かれると、包帯を外した手はもう赤くもなんともなかった。


あぁ、よかった。




「嫌。良いから、上がらせろ。」



「なんでですか。」


「いいから!っ寒いんだよ。」


「隣にはあなたの部屋があるんじゃないですか。」



ブルブルと体を震わせる彼に対して、私は来るなとドアを閉めようとする。




.......あなたはカッコいい。



だから、もう私を酔わせないで欲しい。




「.....いいから、上がらせて。」




また、彼は弱々しい声で私に呟く。




「...嫌です。さぁ、隣に帰ってください」


「無理。やだ、お願い。」



「...っ。」


また、私に甘えてくる。


だからと言って、また、彼の甘い声にいちいち戸惑ったりなんかしないんだから。




「離れてください、ドア閉めます。」


「いや。」


ドアを閉めようとするけれど、彼はがっしりとつかんでビクともしない。


「離してくださいって」


「無理。」


なんでこいつは....

イライラする。


「ほら、歩いて1メートルも距離はないですよ?」


ムカつくこの思いを抑え、
私は、ちょっとドアの隙間を空け、
彼の部屋がある方向を指差す。




.....した時




「そうじゃないんだ。分かれよ」




ふわりと、また、あの香水に包まれた。


女ったらしい嫌な臭い。




目の前は真っ暗になって、いつの間に力が抜けて立っていられなくなる。



それでも、私は倒れないでいた。




「な....んっ」





........彼が私を抱きしめていたから




甘い、甘苦い


龍斗くんの胸の中。



「入る....ぞ?」



その声と同時にドアが閉まる音がした。



ぴしゃんと、寒い風は私の体を邪魔しない。



.......だれも、二人を邪魔しない。