「じゃ、ウチは着替えるから入り口の所で待っといてな」

「あ、うん」

 笹山さんは、そう言うと俺に手を振った。
 俺もそれに合わせて手を振る。

 こう言うのもいいなぁ~

 心の中でそう呟く自分がいた。

「なぁ?持内
 昨日笹山さんがお前の家に泊まったって本当か?」

 その言葉で、俺は我に返った。

「何を言ってるんだ?」

「いや、思ったんだけどさ、確か笹山さんの家はお前とは逆の方向な訳よ」

「うん」

「でよ?
 お前が笹山さんと手を繋いで会社に来るって事はだ……
 お前の家から笹山さんが会社に来たか……
 笹山さんの家からお前が来たのか……
 その二つに、一つ。
 そして、目撃者である田中ちゃんはお前と同じ方向」

 菊池は、そう言うとビシッと俺に指を指して言葉を続けた。

「即ち、『笹山さんはお前の家から出た』でヘキサゴン!」

 で、ヘキサゴンってなんか懐かしいな…
 一時期はやったけど…

「そんな古いネタ誰にもわかんねぇよ」

 俺は、そう言って菊池の意見と弾き飛ばした。