モテないオトコ

 笹山さんの歩くスピードは早かった。
 俺の歩くスピードを殆ど同じで、橘さんほど歩幅を合わせる苦労はしなかった。

「アンタ、歩くスピード早いなー」

 俺の腕を掴んでいる笹山さんが呟いた。

「え?ゆっくり歩きましょうか?」

「んー
 そうやね、急がんでも席は、空いていると思うし。
 ちょっと色々話したい思うし……」

「話したい事?」

「うん」

「持内童貞脱出大作戦戦や!
 童貞脱出してモテモテになるんや」

「俺が、モテモテ?」

「提供は菊池君の財布からお送りいたします」

「え?」

 この人は、いきなり何を言っているのだろう?

「アンタのアドレスを教えてもらった時な?
 菊池君から小遣いもろてんよ。
 これで、アンタとデートを誘たってって……」

 菊池何をしてるんだ……
 そんな事して、お前の何の徳があるんだろう?

「その時、言っててん、『持内童貞脱出大作戦戦』って……」

 俺、またからかわれてるのかな?

 俺は、そんな事を考えながら、ゆっくりと笹山さんに誘導されるようについていった。