菊池は言葉を続ける。

「お前、前の席の女の子の名前、知ってるか?」

「えっと……」

 突然名前を聞かれてもわからない。
 俺が、返答に困っていると女の子の眉がピクリと動く。

「田中 美代ちゃんや!」

 笹山さんが、突然現れて俺のおでこにチョップした。

「笹山さんって、暴力的なんですね?」

「チョップ!チョップ!チョップ!
 ウチが同じ部署だという事も知らんかった癖に言うなチョップ!」

 俺は、続けて4連続でチョップを喰らった。

「痛い、痛い、痛い。
 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 菊池は、遠い目で笹山さんは楽しそうに俺にチョップする。
 その様子を見て、向かえに座っていた田中さんが笑う。

「持内さんも、そんな表情が出来るんですね。」

「え?」

「だって、いつも表情が暗いから……」

「俺って暗い?」

 菊池と笹山さんが同時に答える。

「うん。
 暗い」