初めて入る女の人の部屋。
 部屋に入るとほんのりと橘さんの香りがしたような気がした。

「横になって下さい……」

 橘さんは、そう言うと俺をベットの上に押し倒した。
 橘さんの胸の音が、俺の身体に伝わる。

「私、ドキドキしているでしょう?」

 橘さんは、頬を赤らめながら言った。

「はい……」

 俺の胸に橘さんは耳を当てた。

「持内さんも、ドキドキしてるね」

「はい……」

 橘さんは、静かにキスを求めてきた。
 俺は、それに応じるように橘さんにキスをする。

 橘さんの鼻息がくすぐったい。
 それでも、俺は求めるように舌を絡ませた。

 本当に良いのか?
 本当にこれでいいのか?

 俺は、何度も何度も心の中で自問自答。
 でも、良いんだ。
 ひとときでいい……
 ひとときでも、この人の温もりを感じていたい。
 ひとときでも、この人の中から裕也の存在を忘れさせたい。

「ゆっくり知りましょう。
 お互いのことを……」

 橘さんは、優しく笑うと再び俺にキスをした。