しかし、そんな思考等、一瞬で吹き飛びそうになる。
 俺と橘さんの唇が、結婚しそうになったとき。

「ウッ」

 橘さんの、表情が変わる。

「え?」

「ウッ……ウゥ……」

 橘さんは、餌をため込んだハムスターみたいにホッペを膨らませた。

「ま、まさか……」

 飲み過ぎた女の子。
 そして目の前にある膨らんだホッペ。
 俺の頭の中に、嫌な予感が走る。

 『真実は、いつもひとつ!』

 そんな、言葉が脳裏に走った。

「ケロケロケロケロケロ~ッ」

「うわぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」

 俺の顔に橘さんの中身が飛び散った。
 ちょっとスッキリした橘さんは、ゆっくりと立ち上がった。

「ト、トイレ……」

 そして、そう言うと橘さんはその場を去った。
 俺は、先ほどまで橘さんの胃の中に収まっていた物たちに包まれながら、呆然と横たわっていた。

 裕也……
 裕也って、誰だろう……
 あの様子だと、もしかしたら、俺を誰かと勘違いしていたのかも知れない。

 俺は、汚れたままの状態で、一階へと上がった。
 橘さん大丈夫かな……

「ケロケロケロケロ」

 橘さんの、苦しそうな声が聞こえる。

「大丈夫ですか??」

 俺は、そう言いながら橘さんの背中をさすった。

「あ、持内さん……」

 どうやら、少しは酔いは冷めたみたいだ……

「すみませんでした……」

 橘さんは、申し訳なさそうに誤った。

「俺の方は、構いませんよ……」

「あの、シャワーがありますので、使ってください。」

「案内しますので……」

「……はい」

「それとも一緒に入りますか?」

「え?」

 橘さんの突然の一言に俺の心は再び動揺した。
 胸が高鳴る。
 橘さんと一緒にお風呂……
 なんか緊張する。