俺は、橘さんに案内され、小さな喫茶店の中に入った。
 店員に席を案内され、俺たちはそこに座った。

「あの、怒っていますよね?」

 橘さんが、悲しそうな声で尋ねる。

「え?」

「急に連絡が取れなくなってしまったから……」

「いえ……」

 俺は、メールアドレスを変更され怒った事など一度も無い。

「実は、あの後携帯を無くしてしまって……」

「・・・…そっか」

「信じてもらえないですよね……
 でも、本当の事なんです……」

 それじゃ…・・・
 俺を嫌ってアドレスを変えた訳ではなかったんだ・・・…
 そして、笹山さんからもメールが送れなくなった理由がわかる。

「これ、私の新しいアドレスです」

 橘さんは、そっとメモ用紙を出した。
 そこには、橘さんの新しいアドレスと電話番号が書かれていた。

「許してくれるのなら、メールください」

 俺は、すぐにそのアドレスを携帯に登録した。
 そして、メールを打つ。

  改めてよろしくおねがいします。

 橘さんは、そのメールを確認すると小さく頷いた。