笹山さんは、俺の背中の上で小さく呟いた。

「なぁ、アンタ
 まだ、恭子の事好きか?」

「……はい」

「そうか……
 ウチな。
 あんたの背中が好きや……」

「え?」

「いや。
 なんもない。
 やっぱ、ちょっと歩くわ」

 笹山さんは、そう言うとぱっと、俺の背中から降りた。

「ん~
 今日もぎょうさん飲んだでー」

「本当に飲みすぎですよ」

「気にしない、気にしない」

「じゃ、気にしないので気になるまで飲まないで下さい」

「ふぅ……」

 笹山さんは、ため息をついた。

「優しすぎるのも問題やで」

「俺は、優しくないよ」

「優しい」

「優しくない」

「じゃ、バカやな」

「……どうせバカですよ」

「コラ、認めるな」

 こうやって笹山さんと絡めるのも今日で最後か……
 そう思うと、少し虚しくなった。

「こうやってアンタと絡めるんも最後かぁー」

 笹山さんも同じ事を考えていたみたいだ。