モテないオトコ

 入ったのは静かなクラッシックが流れる洒落たバーだった。
 俺たちはカウンターではなく、テーブルに案内された。

「笹山さん、こんな所よく見つけたね」

「どや、気に入ってくれたか?」

「うん」

「まぁ、こう言うのは男の方が調べるもんやねんけどな」

「あはは……
 すみません」

 俺達の会話が一旦途切れたのを確かめてから、バイトの女の子が声を掛けてきた。

「何になさいますか?」

「オススメは何ですか?」

 こう言う場所は、初めてだから何があるかなんて俺にはわからない。

「オススメですか…」

 女の子は困った顔で苦笑いを浮かべた。

「未来ちゃん
 その二人は若いカップルみたいなので、ピンクパールなんてどうだろう?」

 女の子の後ろから、マスターが声を掛けてきた。

「じゃ、俺はそれでお願いします
 笹山さんは、どうする?」

「じゃ、ウチも同じで…」

「ピンクパール二つですね
 かしこまりました。」

 女の子は、そう言うとマスターの所に戻っていった。

「笹山さんは、こう言うところには、良くくるのですか?」

 笹山さんは苦笑いを浮かべながら言った。

「ウチも初めてや」

「そうなんですか…」

 暫く沈黙が流れる。
 耳の奥で、シーンと言う音が響いている気がする。
 なにか話さなくちゃ。

「緊張しますね。
 こう言う店って……」

「そやねー」

 笹山さんも緊張しているようだ。
 すると店員さんが、そっと温かみのあるピンク色のお酒をそっと出してくれた。

「こちらが、ピンクパールです。」

 そして、そう言うと去っていった。

 俺は、一口飲んでみた。
 それを見て笹山さんも一口飲む。

「おいしいな」

「そうだね……」

 笹山さんは、そのお酒をぐぐっと一気に飲むと、もう一本と注文した。

「あまり飲みすぎないようにね」

「アンタがおるから飲んでも大丈夫」

「もしかして、泊まる気ですか?」

 俺が、そう言うと笹山さんは笑って誤魔化した。