「私にとって兄はかけがえのない存在なんです。私が辛いとき、寂しいとき、たった一人だった私にいつも手を差しのべてくれたのが兄でした。だから今度は私が返す番なんです」


そう。家族から、世間から見放されていた私に兄だけは優しかった。いつも気にかけてくれていた。私にとって兄はかけがえのない存在。そんな兄が今、殺人の容疑で逮捕されている。なにも見なかったふりなんて出来るわけがなかった。


「危険なことはわかっています。でも少しでも可能性があるのならこのまま逃げ出すなんてしたくないんです」

テーブルの下で拳を握りしめた。本当は怖くない訳じゃない。それでも私は兄のために何かしたい。