Blue Bird

「本名でもそうでなくても私は橘綾香なので」

ごまかすようにそう言って終わらせようとする私。だが彼の瞳はずっと私を捉えている。睫毛が長く整った顔がこちらをみていた。

普通の女の子ならこれで好きになってしまってもおかしくない。


「まぁ、いいけど、どうせすぐわかることだし」

そう言うと私を捉えていた瞳は離れた。大翔さんが悪いんじゃない。ただ話すには少し勇気がいる。彼は兄の友人だ。勘のいい彼なら私の名前を言えばすぐに妹だと気づくだろう。それに遼司さんの時は仕方なかったけれど、極力本当のことは言いたくない。誰がどこで聞いてるかわからない。ここは柚木陸、兄の勤めていた場所なのだから。