一人分の狭い空間が、こんな時だけやけに広く感じる。すきま風でも吹いているかのようだ。光夜は溜め息をつくと、ドサリと音を立てて床に座り込む。投げ捨てられた荷物達は、痛々しい声を上げてそこら辺に散らばった。



「……慣れてきたと思ったのになぁ……」



 つい先日のラジオ番組での発言は、瞬く間に嘘となってしまった。一人暮らしを始めてから結構な月日が経つが、光夜は“家族”の居ない家を度々疎ましく思っていた。

 メンバーが泊まりに来てくれる日は良い。つい先日も風巳が料理を作ってくれて一緒に食べたのを、光夜は思い出した。だが一人になると、どうしても胸に押し寄せてくる感情がある。



「お父さんとお母さんは、俺にこんな思いさせたくて産んだんじゃないだろ……?」



 記憶にないその二人を、目を閉じて思ってみる。深く思えば、自分のこの気持ちが伝わるだろうか。非科学的なことにさえすがりたくなる自分を、光夜は頭の何処かで笑っていた。

 “一緒に居ること”はそんなに難しかったのだろうかと、今になって思う。雪那が書いた『桜舞う時』の詞は、面影を忘れた両親を待つ光夜の心にも寄り添っていたのである。