空のギター

　力強く言った織春を見て、タレント達がブツブツ言いながらスタジオを出ていく。すると、スタッフ達がポツリとこぼし始めた。



「……おい、もしかして犯人、あいつらじゃないのか？確かあいつら、新人いびり大好きだったぞ。前もグラビアアイドルの子が辞めてったしな。」

「確かに……あの人達、前から織春ちゃんにつっかかってたよね。」

「俺達勘違いしてたんだな……ごめんな、織春ちゃん!!」



　誤解していた者達が次々に謝ると、織春は首を横に振った。その顔からは、先程までの不安や焦りがすっかりと消え失せている。



「……分かってくれたなら良いんです！もう頭下げないで下さい!!」



　彼女は嬉しそうに笑っている。みんなが噂ではなく“自分”ときちんと向き合ってくれたからと、初めて味方してくれる人が現れたからなのだろう。

　彼女は世間では人気の売れっ子だが、芸能界では孤独だった。その強気な性格ばかりが目立ち、“生意気”というレッテルを貼られてしまったのだ。そのラベルが、Setsunaからの一言と自分の強い意志によって剥がれたのである。するとその時、丁度スタッフの声が響いた。