──同じ頃、彼らの強敵・織春は楽屋でマネージャーと会話していた。本日の仕事は夜のバラエティー番組。それまではくつろいでのんびりして欲しいという、マネージャーの配慮でもあったようだ。



「櫻井さん、来週は生放送番組があるんですよね?」

「ええ、そうね!織春ちゃんは二回目だけど、初めて出る人も居るみたいよ。今回のコンセプトが『フレッシュ』らしいから。」

「新人、ってことですね。何か“レモン”みたいな感じではっきりしないな……」



 織春が言っているのは、レモンの捉えられ方のことだろう。日本では“爽やか”という良いイメージを持つ人も居るが、彼女が居たアメリカではポンコツ、つまり“出来損ない”のような悪い意味合いで使われるのだ。

 新人にはこれからだと期待される面と、デビュー直後で不安定だとされる面がある。織春はその実力で大半の国民を前者の考えに持って行かせることが出来た。だが、勿論後者だと考える人も居る。特に、先にデビューした人達にそう思われるのは自然な流れだ。

 世の中には、努力もせずに他人の才能を妬む者が居る。織春のように努力が当たり前だと思っている人からすれば、とても迷惑な話なのである。