「この曲は“卒業”をテーマに曲を作ったんですが……卒業する方もそうでない方も、詞に込めた思いを感じ取ってくれたら嬉しいです。
……では、Quintetで『桜舞う時』。聴いて下さい。」



 Setsunaがマイクをスタンドへ置くと、光夜のドラムを合図に演奏が始まった。スッと息を吸うSetsuna。その音が、マイク越しに観客の耳まで届いた。





風に舞う花弁(はなびら)は
いつかの僕を 思い出させる
桜風吹く この場所に
あの日も僕は立っていた

心に残る思い出は
“綺麗”ばかりじゃないけれど
忘れてしまう その時を
何故か恐れる僕がいる


人はきっと憧れる
自分が決してなれないものに





 雪那の歌声が響いた瞬間、その場に居た全員が息を呑んだ。高い音も低い音も、限りなく透き通っていて──綺麗。この一言がぴったりだったのだ。



「凄い……さっきまであんなに盛り上がってた客を一瞬で黙らせるなんて……」



 ステージ袖から見守っていた硝子が思わず呟いた程だった。バックの演奏も素晴らしく、誰もが食い入るように五人を見つめている。曲は、サビのSetsunaとKazamiのハモリに入っていく。