控え室に着いた五人だが、何処か落ち着かない。みんながみんなソワソワしていた。



「何か実感湧かないな……」



 光夜がポツリと呟く。みんなもきっと同じ気持ちだったのだろう。無言で頷いて、言葉に代えた。すると、一人のスタッフから疑問の声が上がる。



「あれ?あんなに大々的にデビューが報道されてるのに、みんな知らないの?」

「……え?」

「毎日凄かったわよー!新聞や音楽雑誌でもあれこれ書かれてたし、テレビをつければデビュー曲のCMがやってるし!五人共、忙しくてテレビ見る暇もなかったのねぇ。」



 五人は絶句した。自分達がそんなに派手に宣伝されているとは思いもしなかったのだ。全国から選りすぐられた彼らには、実は大きな注目が集まっていた。駆け出しのアイドルが多くデビューするこの世の中、若いのに経験をしっかりと積んでいる五人は期待されているのかもしれない。



「し、知らなかったな……」



 風巳の呟く声が、白い壁に反響する。五人は期待と不安に押し潰されそうだった。スタッフの一人が見せてくれた音楽雑誌には“実力派ユニット・デビュー!”の文字が踊っている。不安の方が勝るのも当然だ。