──説明しよう。S.S.G.とは、“10代~30代の才能ある男子を集めた芸能プロダクション”だ。だから、女である雪那はS.S.G.には入れない筈なのだ。



「大丈夫、大丈夫!これ付けるし。これで絶対バレないでしょ?」

「……そういう問題じゃねぇだろ。」



 自分の髪色と同じブラウンのウイッグを鞄から取り出してにこやかに言った雪那に、頼星がよく通る低い声を向ける。その鋭い目は、まっすぐに雪那を捉えていた。



「確かに、俺とお前がグループ組んでデビューできたら良いなとは言ってたよ。でも受かったとしてさ……バレたらどうすんだ?それにお前の実力なら、別のオーディション受けても受かるだろ。」



 “何急いでんだよ。”そんな気持ちが隠れた台詞を紡いだその表情は、何処か不安げだ。すると雪那が、途端に声を荒げた。



「だって!このチャンスを逃したら、もう次はないかもしれないんだよ!?
もし運良く芸能界に入れても、バレたら追い出されるってことくらい分かってるよ!!だけど……お姉ちゃんとの約束果たすのは今しかないんだもん!!」



 “このチャンスを逃すものか。”雪那の両目がそう言っている。彼女が必死になるのには、実は理由があるのだ。