いっそのこと、彼女を忘れてしまいたかった。だが、そう思えば思う程、記憶の中の彼女が微笑みかけてくる。

 ──何て酷なんだろう。彼女にとっても、自分達にとっても。頼星達は、そう思わずにはいられなかった。



「……硝子さんや社長、元気かなぁ?何か、久し振りに会いたくなっちゃったかも。」



 紘が懐かしそうに言うと、彼の斜め前に居る光夜が頷く。風巳と頼星は、溜め息混じりだが、小さく頭を動かした。四人が感傷に浸っていた、その時だった。

 突然、頼星の携帯が鳴る。ディスプレイを見た頼星は、一瞬目を丸くした。



「はい、はい……え!?」



 驚いた声を上げる頼星に、店内の人々が迷惑そうに振り向く。四人は慌てて身を屈めたり、目を伏せたりした。



「頼星、どうしたんだよ?」



 通話中の頼星に、風巳が小声で言う。頼星は話し相手に「ちょっと待って下さい」と伝えてから、三人の方を向いた。



「雪那のお母さんからで……何か、見せたい物があるって。硝子さん達にはもう連絡してて、すぐ家に来てくれないかって言ってる。」



 とにかく行ってみよう。そういう話になり、四人は足早に店を後にした。