「……ほんとに、もう一緒に歌えないのかよ……!!」



 震える声で、風巳が言う。ツインボーカルとしてやってきただけに、ショックが大きいのだろう。彼は頼星の次に彼女と打ち解けていたと言っても過言ではないくらい、息の合ったパフォーマンスを見せてきたのだから。



「俺も信じられないよ……だって、さっきまで一緒に歌ってたのにっ……」



 そこまで言って、光夜は言葉を詰まらせた。込み上げてくるものを必死に耐えているのだと、誰が見ても分かる。仲間達を心配するあまり過敏になる自分に、「もうちょい落ち着きなよ、リーダー」と、肩の力を抜くように言ってくれた彼女。それが今、こんな姿になってしまっている。強く奥歯を噛み締める彼を見ていたら自分の目頭も熱くなりそうで、その場に居た全員が思わず目を逸らした程だった。



「明日、三人で雪那と頼星の卒業式行こうって約束してたのに……」



 紘も受け入れ難い表情で、彼女の亡骸(なきがら)を見つめている。ついさっき、「やっぱ紘のピアノは最高だね!」と誉めてくれた少女の魂は、もうここにはないのだから。いつもなら一番に感情が溢れてしまっている筈なのに、その行動すら起こせなかった。