「──何で……何でなんだよ!!」



 薄暗い部屋にある、“無”を思わせる白いベッド。そこに横たわる少女は、顔に白い布を被せられている。体のあちこちには傷や出血の痕があり、彼女の両親に数年前の出来事を思い出させた。

 周りには、事実を認められずに叫んだ幼馴染み。彼女の仕事仲間と両親。そして、彼女が働いていた事務所の社長とマネージャーが居る。雪那というその少女は、青い世界を羽ばたく鳥か、茜色の時分に吹く風、あるいは闇夜に浮かぶ星になったらしい。



「……まさか、こんなことになるなんて……」



 硝子が落胆した声を出す。妹のように思っていた雪那の変わり果てた姿を前にして、ただただ立ち尽くすばかりだ。



「この度は……本当に何と申し上げたら良いのか……」



 当然の如く、高藤も困惑している。雪那の両親に対して言葉を選んでいるのだろう。しかし、彼の願いも虚しく、彼の脳は上手い台詞の一つさえ思いついてはくれない。

 残されたQuintetのメンバー達はといえば、呆然と無機質なベッドの上にある人影を見つめている。どの視線もおぼろげで、焦点が定まっているのかどうか疑わしい。