そろそろだろう……と、誰もが心の何処かで思っていたのかもしれない。反対する者は一人として居なかった。雪那は仲間達に笑いかけて、話を続ける。



「もしあのことを公表したとしても、俺は俺だから。ずっとずっと、QuintetのSetsunaだから。“みんな”もそう思ってくれてるって、俺は信じてるんだけどなー?」



 “みんな”とはきっと、メンバーとファンの両方を差しているのだろう。みんなは男だとか女だとか関係なく、自分を好いてくれている。雪那はそう信じているのだ。

 まっすぐな台詞からそれを読み取ったのだろう。四人分の声が重なって、雪那に誓いの言葉を返した。



「……当たり前だろ?」



 自分達はもう、ただの一組のアイドルグループではない。出会う前はお互いのことを全く知らなかった五人だが、いつしかそんな感情が芽生えていたことに気付く。“家族”や“兄弟”といった関係に、もしかしたら一番近いのかもしれない。

 絆を確かめ合った五人は、別れの挨拶をしてそれぞれの家路に着いた。頼星と並んで歩きながら、雪那は藍色に傾き始めた空を見つめる。

 ──二人の頭上を、一筋の光が秒速で駆け抜けていった。