空のギター

「お疲れ様！もうすぐこのメンバーとお別れかと思うと寂しいわねぇ……」



　築山監督が囁くように言えば、スタッフ達は皆揃って頷いた。運転していた男性が、「一足先に撮影終わっちゃった子達も居ますしね」と呟く。藍や宏夢、織春は既に出番を撮り終え、それぞれ別の仕事をこなしているのだ。



「映画のPRイベントや試写会が終わったら、みんなバラバラになっちゃうのかぁ……」

「沙絵利ちゃん、そんなに落ち込まないでよ。俺達はまだ撮影あるんだし……それに、みんなと連絡先交換したじゃん。だから、またいつでも会えるよ！」



　自分を励ますSetsunaに「うん、ありがとう」と返し、沙絵利は小さく笑った。こういう仕事が初めてである彼の方が精神不安定に陥ってもおかしくないのに、役者を本職としている自分がこんな状態とは何とも恥ずかしい。沙絵利は内心気合いを入れ直し、Setsunaに尋ねた。



「そういえば明日、織春ちゃん達とクリスマスイベントなんだって？頑張ってね！」

「うん、思いっきり歌ってくるよ！ありがとうね。」



　僅かに明るさを取り戻す車内。笑みを交わす二人を、夜空の青い月が、穏やかな笑みをたたえて見守っていた。