空のギター

　と、その時だった。「休憩終わり！みんな集まってー！」という監督の声がスタジオに響き、出演者やスタッフが彼の周りに集まってきた。全員が揃ったのを確認すると、築山監督が声を張り上げる。



「明日からは、メインの文化祭のシーンを近くの中学校で撮るからね！ま、私が考えてる最大のメインはここじゃないんだけど……」



　監督はそう言うと、Setsunaと沙絵利を見てニヤリと笑う。沙絵利は彼女の意図を瞬時に読み取った。



「もしかして、ラストシーンのことですか？」



　尋ねた沙絵利が監督の表情を窺うと、彼女は「ご名答！」と微笑んだ。自分の考えが当たっていたことが分かり、沙絵利も笑顔を見せる。



「映画のタイトルにもなってる大切なシーンだからね。Setsuna君と沙絵利ちゃん、その時は特に気を引き締めるように！」



　二人が深く頷けば、「じゃあ続き撮るよ！みんな準備して!!」という監督の声で、出演者達が位置に着く。冬へ近付く街中に出ての撮影は肌寒かったが、誰もそんな顔一つ見せない。



「寒いけど気合い入れて行こう！用意、スタート!!」



　監督の声を合図に、出演者達の演技が始まった。