空のギター

 高校1年生の笹岡宏夢(ささおか ひろむ)、Setsunaの事務所の先輩である19歳の新堂藍、そしてSetsunaと同じく演技初挑戦の織春。この三人が、主人公と共に華麗な歌と演奏を繰り広げるバンド仲間だ。Setsunaと沙絵利は、彼らに「お疲れ様!」と笑いかけた。



「Setsuna、歌のシーンがまだないから退屈してるんじゃない?」



 藍がおどけた調子で、首をすくめながら言う。「そんなことないですよ!」と返しながらも、Setsunaは内心ドキリとしていた。本業を活かすシーンの撮影がなかなか始まらないので、休憩中の鼻歌がいつもより増えているのだ。

 チョコレート色の髪をサラリとかき上げ、「いやいや、図星でしょ?」と藍が微笑する。Setsunaが苦笑しながら「はい」と答えると、藍は「もうすぐあるよ、きっと!」と励ましの言葉を贈った。



「そういえばSetsuna、休憩中はよく音楽聴きながら歌ってるよな。上手いから全然気にならないけどさ、これが“雑音”だったら苛々するんだろうね。」



 襟足を長めに残した黒髪に爽やかな笑顔という外見に似合わず、案外黒いことを言う宏夢。織春が思わず、「その言い方は酷いんじゃ……」と口を出した程だった。