空のギター

「撮影始まったら、雪那とあんまり会えなくなるねぇ……ちょっと寂しいけど、体に気を付けて頑張ってね!」

「そうそう!雪那はボーカルでもあるんだから、喉には特に注意しとけよ?って、俺も人のこと言えないか。」



 自分の体調を心配してくれている紘と風巳の言葉で、雪那は少しだけ元気を取り戻した。演技に関しては素人だから、共演者達から沢山学ばなければならない。肩身が狭いのも仕方ないだろう。だが、音楽に関してはプロだ。例え演技にケチを付けられたとしても、歌と紡ぐ音にだけは何も言わせないようにすれば良いのだ。そう考えたら、何だか落ち込んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。



「雪那。これから大変になるだろうけど頑張れよ。」

「……うん。自分なりに演じきってみせるよ!みんな、公開楽しみにしといてね!!」



 珍しく優しい頼星の一言に、雪那はそう答えてニッコリ笑った。みんなが口々に激励の言葉をかけてくれる。俄然やる気を出した雪那は、四人に向かって「ありがとう!」と返した。

 季節は秋。暑さが抜けた街では、涼風が枯葉を踊らせていた。