空のギター

 ──後日、五人に映画と主題歌の詳細が伝えられた。詞は監督が映画の内容に合わせて作ってあるので、五人にはメロディーを付けて欲しい、とのことだった。五人は映画の台本をもらい、内容を把握した上でメロディーを作っていくことにした。

 また、雪那には演技のレッスンと台詞覚えが加わるため、メロディーは雪那以外の四人を中心に考えることした。雪那には映画に集中して欲しいというメンバー愛、なのだろう。



「この映画の主人公、確かに雪那にぴったりだな!」

「俺も思った!あの助監督さん、なかなか良い目してるよ。」



 光夜が納得したように言うと、風巳も賛成の声を出す。紘と頼星も、台本をめくりながらうんうんと頷いている。

 雪那が出る映画は、“青春時代の夢と葛藤”をテーマにしたものだった。ある中学校を舞台に、雪那扮する主人公の軽音部の少年が、歌うことで“自分”を見つけていく、というストーリーである。

 出演者が紹介されているページには、誰もが知っているようなベテランや、今をときめく人気演技者の名前ばかりだ。雪那は自分の名前だけが酷く浮いているような気がして、内心とても不安だった。