「──本日最後のゲストは、ガーリーボイスの歌姫・織春さんです。今回の振り付けは彼女自らが担当されたそうですよ。では織春さん、お願いします!」



 司会者の声でワーッと歓声が上がる。織春が登場すると、お客は更にヒートアップする。織春は小さな顔いっぱいに花のような可愛らしい笑みを浮かべ、手元のマイクに向かって力一杯叫んだ。



「みんな、こんばんはー!今夜は思いっきり楽しんで行ってねー!!
……それじゃあミュージック・スタート!」



 織春の掛け声を合図に、会場の何処かにあるスピーカーからキーボードの旋律が奏でられる。静かに始まる織春の新曲を、誰もが輝きに満ちた瞳で見守っていた。





明日(あす)に向かって
投げるこの思い
受け取る未来は
いま彼方に…





 焦らすように伸ばした歌声と伴奏がやむと、織春の曲の定番となったロック調の迫力あるBGMが流れ出す。体の奥から沸き上がるビートを感じながら、織春は広いステージをたった一人で盛り上げていく。バックダンサーもバックミュージシャンも居ないのに、踊る彼女の後ろにはそんな映像が浮かんでくるようだ。小柄な体からは、壮大なパワーが感じられる。