五人が手を振ってさよならをした頃から、さかのぼること数時間前。午後2時過ぎの芸能ニュースを見ていたとある男性は、遅めの朝食であるトーストを思わず口から落としそうになった。



「事務所に無許可で……へぇー、なかなかやるねぇ。どんな子達だろ。」



 女性レポーターがライブを見終えたばかりで興奮したままのファン達にインタビューしているが、はっきり言ってそんなものに興味はない。ゲリラライブの遂行者達を知りたい男性は、トーストを飲み込んだ喉を牛乳で潤し、テレビから目を離さずに、ゆで卵を掴んでかじり始めた。が、次の瞬間。彼は遂に、ゆで卵を床とお見合いさせてしまった。

 ──テレビ画面いっぱいに映ったのは、楽しそうに歌い踊る少年達。ソウルフルなステージからは、本当に音楽が好きなんだと伝わってくる。暫く呆然としていた男性だったが、ハッと気付いたようにテレビのチャンネルを変えていく。どの番組も少年達のことを報道しており、男性は今一度、画面の中の少年達を見やる。



「……この子達、使えるな。」



 男性はスッと立ち上がり、歯磨きをしてスーツに着替えて出かけていく。床に落ちたゆで卵が、無言で彼を見送っていた。