「……みんな、行かなくて良いのか?ファンが待ってるぞ。」



 一人のスタッフがにこやかに言う。アンコールをしてもらった時の対応など全く聞かされていなかった五人は困ってしまい、何をすべきか見当がつかない。そんな中、裏方達が何やら小声でやり取りを始める。硝子にもその旨が伝えられ、彼らの視線が一斉にメインプロデューサーへと注がれる。彼は笑顔で「了解!」と告げ、五人に向かって親指を立てた。



「……新曲先取りで行っとくか!ファンへの良いお土産になるだろ。
近々歌入れだったよな?一足先に披露してこい!」



 デモテープが機械にセットされたガチャリという音は、これから始まるであろうファン達の再沸騰を想像させる。目を閉じれば、まだ聞こえる。自分達を呼んでいる声が。

 五人は顔を見合わせ、互いに笑んだ。「はい!!」と揃った声に、裏方達や硝子も微笑む。



「……さぁ、行ってらっしゃい!」



 背中を押すような硝子の声に頷き、アンコールが響くステージへ飛び出していく五人。疲れている筈の足取りは羽が生えたように軽やかだ。

 アンコールの声が、感動を含む絶叫に変わる。熱い時間が、再び幕を開けた。