空のギター

「今日は特別に、織春ちゃんと俺達がコラボしたいと思います!」



 Raiseiの言葉で、またもやファン達が沸く。滅多にない他アーティストとのコラボ予告に、会場は熱気を帯びた。織春のデビュー曲であるロック調の『my mind』を、彼女とSetsunaが一緒に歌うらしい。彼以外の四人は、いつの間にかステージに現れていた楽器の所へ向かう。どうやら舞台の後方だけが回転し、四人分の演奏席が完成する作りだったようだ。



「織春 with Quintetで『my mind』、そしてQuintet with 織春で『unrequited love;』。二曲続けて聴いて下さい!」



 Setsunaの低いアルトが響くと、Kouyaのドラムスティックの音で演奏が始まった。





明日(あす)と今日の真ん中で
立ち止まるあたし
Like a stranger
物で溢れたこの街じゃ
欲しいものは
見つからないよ





 ガーリーでいて力強い織春の声とは違う、繊細さと存在感を纏ったやや低いSetsunaの声が会場の空気を拐う。織春は鳥肌が立つのを感じていた。

 同じ曲なのに、歌い手が違うだけでまるで別物だ。胸が熱くなる。自分のパートを口ずさんだ織春は、初めて彼と歌声を重ねる喜びを“音”に込めた。