「あの子、どっかで見たことあるんだよな……誰だっけ?」



 思い当たる節があるのか、頼星は小さく唸っている。新人のタレントだとすると見覚えがあるというのはおかしいし、かといってこんな知り合いが居るのかと言われると悩んでしまう。

 紘が「頼星の知り合いなの?」と尋ねると、頼星は「見たことあるような、ないような……」と煮え切らない返事をした。記憶も定かではないようだ。頼星が悩んでいる内に、休憩時間が終わって招集の声がかけられた。四人は返事をして立ち上がり、イベントに向けてのレッスンを再開する。



「頼星。さっきの子、CMか何かに起用されてるモデルかもよ。藍さんがカメラ慣れしてたって言ってたし。最近売れてきたのかもな。」



 光夜に言われ、頼星は「そうかも……」と呟いて自分を納得させた。僅かなわだかまりが残ったが、これ以上考えても答えが出そうにないので、やむなく思考をレッスンに切り替えたのだった。

 スケジュールを順調にこなし、差し入れのお菓子をたいらげ、満足げな顔で帰途に着いた四人。明日は雪那が帰ってくる日だ。彼らの表情は、疲れているにも関わらず晴れ晴れとしていた。