「ねぇ雪那ちゃん。まさかとは思ったんだけど……」



 瞳は小声で「QuintetのSetsunaってもしかして……」と続けた。雪那は口角を上げ、含み笑いをする。“自分”に気付いている人は他にも居るのかもしれない。どんな自分も“一人の人間”なのだと。



「うん、そうです!内緒ですよ?事務所と、学校の友達の一部しか知らないんだから。」



 雪那は腕の中の遥にも「ねっ?」と言って念を押す。遥はコクリと頷き、「はーい!」と元気良く片手を挙げる。その仕草に、雪那と瞳は思わず笑みを浮かべた。

 ニコリと笑う瞳。その両の目は、いつか雪那に命の大切さを教えてくれた時のように穏やかだ。応えるように、笑みを返す雪那。その表情は、世間を賑わせている“Setsuna”そのものだった。



「そう……デビューおめでとう。実は、私も遥も大ファンでね。CDも持ってるのよ!」

「せつなちゃん、がんばってね!はるかもママもおーえんしてるからっ!!」



 瞳に続き、遥が無邪気に笑って言う。目の前の二つの命に恥じぬよう、雪那は凛として告げた。



「“うん。俺、頑張るよ!みんなに伝えたいこと、まだ沢山あるからね!!”」